COLUMN

【スペシャル対談】なぜ日本人は片付けが苦手なの?ゲスト:整理収納アドバイザー・鷲谷直子氏〈フレキシブル代表〉

2026.02.20
Topics・トピックス

ある調査によれば、日本人の約3分の2は「片付けが苦手だと思う」という結果が出ています。その理由として、子どもの時に自分で片付けることを学んでいない、良かれと思い親が子ども部屋を片付けてしまうなど、そもそも片付ける習慣がないまま、大人になってしまうケースがあるといいます。
 

そこで、ヨーロッパ駐在中の育児経験を活かし、お子様の収育にも取り組む、整理収納アドバイザーの鷲谷直子氏をゲストにお迎えし、幼少期の『収育の重要性』について対談を実施。鷲谷先生のご自宅にお伺いし、ミッシェル・ホームサービス代表・大坂みゆきが、詳しく話をお聞きしました。
 

2602_01

写真(左)鷲谷直子先生、(右)ミッシェル・ホームサービス・大坂みゆき社長

 


ヨーロッパ生活で体感した
ライフステージに合わせた暮らし方

 

大坂社長(以下、大坂):本日は、幼少期の『収育の重要性』というテーマでお話を伺わせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。鷲谷先生は長くヨーロッパで生活されていたそうですが、どれくらい住まわれていたのでしょうか?
 
鷲谷先生(以下、鷲谷):結婚してすぐに海外への転勤が決まり、イギリスに6年半、その後ドイツで9年半、合計16年間ヨーロッパで暮らしました。
 

大坂:かなり長い間生活されていたのですね。ヨーロッパのお家って、いつもきれいに整っているイメージがあるのですが、実際はいかがでしたか?
 

鷲谷:みなさんきれいにされているお家が多かったです。転勤直後は夫婦二人でしたので、割と小さな家が立ち並んでいるエリアに住みましたが、近隣には私たちのような二人暮らしの他、リタイアされたご夫婦やシングルマザーのご家庭が多かったです。そんな中でもリタイアされたご夫婦のお家は、既にしっかりダウンサイジングが完了していて、美しかったですね。お庭もきちんと手入れされていて素敵な暮らしでした。
 

大坂:まさに雑誌やテレビで見るような光景ですね。
 
 

2602_02

 

鷲谷:一般的にイギリスでは、18歳になると親から独立し、一人暮らし用の小さな住まいへ移ります。その後、結婚したり、子どもが生まれたりしたらベビールームがあるような広い家へと引っ越します。そして、子どもが独立したら、夫婦二人で住む家へとダウンサイジングしていくのです。家族形態に合わせて合理的に住み替えていくんですね。インテリアも生活に合わせて徐々に入れ替えながら、最終的には、お気に入りの物や、親から引き継いだ大切な物で整えていきます。
 

それに伴い不要な物も手放していくので、日本のように生前整理で苦労する事はあまりないんです。ヨーロッパは、物が循環する仕組みや、寄付文化もしっかり定着しているので、気軽に手放せる環境も整っていると感じました。
 

大坂:欧米では、お家の中をお客様に見せる習慣があると聞きましたが、ご経験はありますか?

 

鷲谷:いわゆる“ハウスツアー”ですね。イギリスではお食事に招かれたら、奥様が準備をされている間に、旦那様が家の中を案内してくださるのですが、私も何度も経験しました。棚のドアまで開けて、「ここには〇〇が入っているんだよ」と説明してくれたり(笑)。どこに何がしまってあるか、きちんと把握されていて驚きました。 家庭人として日頃から家事をされているからだと思います。どのお宅もとてもきれいに整理されていましたよ。
 

大坂:お客様に棚の中まで見せるなんて、日本ではとても考えられないです(笑)。でも、見た目だけでなく、きちんと片付いているからこそ、見せることができるんですね。
 

2602_03

 

鷲谷:おそらく文化的な慣習の違いだと思いますが、みなさんとてもオープンマインドで、人を招き入れることへの抵抗感はあまりないように感じました。プライベートな空間を見せるという行為は、ゲストに対して信頼感を示すと同時に、家を社交の場所として捉えているからかもしれません。おかげで、一般家庭の暮らしぶりを、たくさん拝見できてとても勉強になりました。
 

どのお家も共通して言えることは、“今の暮らし”をとても大事にされていたことです。実はヨーロッパの住宅は、日本でいう押し入れのように部屋に付随した大きな収納がありません。そのため、日常的に使わない物までキープするスペースはないので、自然と今の生活に必要な物を厳選し、効率的且つ美しく収納することを考えます。購入前に本当に必要かを吟味したり、不要になったら必要としている方へ譲ったりして、スッキリと暮らす習慣が根付いているんだなと感じました。

 
2602_04

ダイニング脇の作り付け棚には、お気に入りの食器を収納。奥の物もさっと取り出せるよう、引き出し式に改良されている。

 

中学までは親が子どもの持ち物をコントロールし
片付けと自主管理を学習させる

 

大坂:小さなお子様のいるお家はどうでしたか?
 

鷲谷:小さなお子様がいても比較的きちんと整えられていましたが、片付けを語る前に日本やアジア圏と大きく違う点があります。それはプレゼントのいただき方が違うのです。例えば、赤ちゃんができたら、必要なものを書いたベビーリストを作ります。それを見て誰が何をプレゼントするかを決めるので、貰い過ぎや被りは起こりません。プレゼントする側も、何がほしいか先に聞くのが一般的です。
 

また、中学生頃までは、親の権限で子どもの持ち物をコントロールすることが普通で、たとえ祖父母であっても勝手に買い与えたりしないんです。「これを欲しがっていたけど大丈夫?」「〇〇はどうかしら?」と親に相談すると、「まだ早い」とか、「今は〇〇がいい」と返答がある。だから、不必要な物が増えるとか、分不相応な物がプレゼントされることがないのです。
 

大坂:物をいただく段階から全く違いますね(笑)。考え方が徹底しています。
 

鷲谷:そうですね。すごく合理的だと思います。往々にしてアジア圏は、買い与えること=愛情表現のような慣習があり、物が増える傾向にありますが、ヨーロッパでは、親が子どもの持ち物を制限する、またはコントロールすることへの意識が高いと思います。
 

2602_05

 

大坂:お話を伺って、私たちと考え方が全く違うことがよく分かりました。“収育”を考える前に、まず、入り口を制限して余分な物が増えないようにすること。これは整理収納の基本ですが、改めてとても大事なことだと感じました。ちなみに、片付けが苦手なお子様のいる家庭はどうですか?やはり、雑然と散らかしてしまうのでは?
 

鷲谷:子ども部屋が散らかっていても、親が片付けることはあまりないですね(笑)。決して無関心なわけではなく、個を尊重する個人主義であって、あえて自己管理に任せます。探し物が見つからないなど、不便だと思えば自分で片付けなさい、という考え方です。
 
大坂:リビングなどの共用部分はどうですか?お子様の物もありますよね?
 

鷲谷:そうですね。それは日本と同じです。リビングの一角に収納コーナーを作り、夜寝る前にリセットする習慣を身につけさせます。その時点ではみ出ている物は、「これはいらないのね?」と言って捨てる仕草をすると、大事な物は慌てて片付けるか、自分の部屋へ持っていきます。そうやって自分で管理することを覚えさせるのです。それに壊れていたり、破れていたりしても、本人が申告するまで親が先回りして行動することはないですね。気づいていても自己申告を待ちます。
 

大坂:もう、全てにおいて毅然としていますね。片付けだけでなく、自立心を養うために徹底しているというか……。
 

鷲谷:そうですね。学校も“パブリック”と“パーソナル”の区分けがはっきりしています。みんなで使う文具類はパブリックスペースに色々と置いてあるのですが、そのために使い終わったら元の場所に戻す動作が一日に何度も生まれます。これが片付けの習慣にもつながるんですね。そして、足りなくなったり、壊れたりしたら先生に申告するんです。色んな家庭のお子さんがいるので、考慮されてのことだと思いますが、そうすることで“パブリック”と“パーソナル”の区分けや、物を大切に扱う意識が養われていくのだと思います。
 

大坂:確かに日本は “パブリック”と“パーソナル”の区分け意識が曖昧かもしれません。リビングに置きっぱなしの物を、親が片付けてしまい、自分で片付ける習慣がない…とか。小さい時から、使った後は自分でリセットする習慣が身についていれば、大人になっても「片付けが苦手」と感じる人が減るかもしれません(笑)。
 

鷲谷:例えば、日本で忘れ物をしたら親が学校まで届けますが、イギリスではないですね。恥ずかしい思いをしたり、困ったりするのが嫌だったら「自分できちんと準備しなさい」という個人主義の発想に基づいています。万が一、何か無くしたとしても逆に「ちゃんと管理していましたか?」と問われます。日本と比べて盗難も多いので、自分で管理するように小さい時から躾けるのだと思います。
 

大坂:なるほど……。片付けひとつ例にとっても、ヨーロッパと日本で、これほど差があるとは知りませんでした。大変参考になりました。

 


アドバイザーの役割は、お子様と対話し
自ら判断するよう導くこと

 

大坂:最近、ミッシェルでも子ども部屋の整理収納を頼まれることが増えてきたのですが、小さなお子様の場合、鷲谷先生はどのような流れで作業を進められますか?
 

鷲谷:親御さんが同席されると遠慮して言えないこともあると思うので、最初は親御さんとお子様と別々にヒアリングします。片付け作業もお子様と二人で進めるようにしています。やり方は大人も子どもも同じですが、やり出したらお子様の方が早い時もありますね。

仕分けの際は、「この中でよく使っている物はどれかな?」「この中で好きな物はどれ?」など、本人と会話しながら分けていきます。「この残った物はどうする?」と聞くと、「いらない」と返事が返ってきたり(笑)。もちろん、悩む時もありますよ。そんな時は、「サイズが小さそうだけどまだ着られる?」と質問すると、少し考えてから「いとこの〇〇ちゃんに聞いてみる」というお子様もいましたね。お子様なりにちゃんと考えられるのです。
 

大坂:そうなんですね……。いくつ位から判断できるのでしょうか?
 

鷲谷:幼稚園児位から可能ですね。おそらく、今までこのような質問をされたことがないんだと思います。問いに対して自ら判断させること、考えさせることが大事です。仕分け後に親御さんへ、「きちんと一人でできましたよ」と報告すると、みなさんびっくりされますが、日常生活も判断の連続ですよね?このような体験を通して、小さい時から自分で考える力を身につけられたら嬉しいです。

 
2602_06

 
2602_07


ご自身のお子さんに対しても片付けの習慣化を実践されたそう。

 

大坂:本当にそう思います。最近は、習い事などで多忙なお子様も多く、じっくり時間が取れない時もあり、非常に残念ですが……。
 

鷲谷:親御さんもお子様も本当にお忙しいですね。そんな時は、ひとまずカテゴリ別に、明らかに劣化している物、年次が古い物などを仕分けしておいて、お子様に判断していただくよう促します。それと同時に、親御さんへは入り口を制御すること、つまり買いすぎ防止の重要性もお伝えします。そうすることで無駄も省け、物の管理が楽になります。片付けは家族みんなが快適に暮らすためのスペースづくりです。
 

大坂:みなさん多忙すぎて、ゆっくり考える余裕すらないのかもしれませんが、そんな時は、ぜひ一度プロに相談していただきたいと思います。鷲谷先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうごいました。
 


●取材協力●
フレキシブル代表・鷲谷直子

一般社団法人ハウスキーピング協会所属最高ランク認定プロ、整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師、住宅収納スペシャリスト、ライフオーガナイザー1級など。イギリス・ドイツに16年間居住、現地で出産子育てを経験する。帰国後、収納やインテリアなどの資格を取得し、2016年にフレキシブルを起業。「暮らしの変化に対応する美しい収納」、「人が主役の暮らし」を提唱しながら、個人宅、店舗での整理収納サービスを700軒以上実施。「整理収納プロ育成講座」の開催や、後進の育成にも努めている。近年は生前整理セミナーとして、自身の実家や夫の実家、お客様宅の実例を紹介しながら、「50代から始める賢い生前整理」を推奨している。
 

飾り線

整理収納に関することなら、お気軽にお問合せください!
 

私たちと一緒にお仕事をする家事大好きスタッフも随時募集中。
詳しくは採用情報をご覧ください。
 
また、Michell!公式Instagramも日々更新しております!
こちらからご覧ください

ARCHIVE