“使い続けられる楽しさ”を基準に
モノを選ぶというエコ。
せんせい:高橋百合子
たかはし ゆりこ さん プロフィール
1948年10月生まれ。立教大学日本文学科卒業。
読売新聞社勤務を経て1987年に株式会社オフィスオクト設立、読売新聞の企画制作からスタート。1990年、スウェーデンのオーワック社の日本総販売代理店、株式会社エンヴァイロテックを設立し環境機器の輸入販売を開始。2000年Sweden Japan Trade Award Grand Awardを受賞。同年からリビングデザインセンターOZONEでの「サスティナブルデザイン展」の企画を手がけ、大きな反響を呼び、現在のオフィスオクトの業務となる。「環境」への取組み経験から、この分野における講演、執筆の依頼も多い。
環境にいいモノ、どう選ぶ?
買い替えればエコ。そんな情報に溢れている近ごろの中で、環境にいいモノを選びたいけれど忙しい中で品物を吟味するのはちょっと難しい気が。ちいさな時間にできるエコなお買い物のコツとは?
そこで‘90年代から国内外のサスティナブルな商品を数多く紹介してきた株式会社オフィスオクト高橋百合子さんに、その基準を伝授していただこうと麻布の閑静なお住まいにうかがいましたが・・・。
「実は私、お買い物ってあまり好きじゃないんです。仕事はモノの販売をしているんですけれど(笑)。限られたスペースの中ではモノはできるだけ少なくしておかないと、すぐに溢れてきますよね」と、意外なお答え。
高橋さんの会社で取り扱っているのはスウェーデン、フィンランド、デンマークなど環境先進国の日用品を中心とした環境にやさしい商品。そんなモノ選びの基準はどこにあるのでしょうか。
見栄や気取りより、自分の気持ちよさ
「仕事で年数回、スウェーデンに行くんですが、現地の取引先のファミリーとは家族ぐるみでお付き合いしていて、彼らのサマーハウスに何度も滞在させていただいたんですね。日本の別荘ってどこかステイタス的で、避暑地はお金を使わなくてはいられないシステムになっていますが、スウェーデンの友人達の夏休みの過ごし方は、自然に囲まれたサマーハウスに生活の場を移すだけ。ボートに乗って、釣りを楽しみ、料理をして普通に暮らして・・・。豪華さには無縁の施設ですが、そこで過ごさせてもらう時間は本当に夢のように心地いいんです。自然に囲まれたスウェーデンの暮らし方やモノ選びの基準は人間の芯、本質的な部分が気持ちいいかどうか。見栄や気取り、他人からどう見られるかじゃないんです。そんな自然と一緒に暮らす文化に根ざしている、彼らの生活の中から出てきたモノって、すてきだなって思えるんです」
長く使い続けてられるモノ選びを
高橋さんのリビングにある食器やインテリアも、シンプルなデザインで機能的なモノがセレクトされています。お気に入りのお買い物スポットは仕事場に近いスーパー紀伊国屋。ご主人と2人暮らしだから、少量でよく、丁寧に作られ吟味された食材をどう料理するか考えながら、必要なものだけを選ぶのだとか。
「結局、私はエコな商品って高額なブランド品でも、技術の粋を集めた環境オタクな商品でもないと思うんです。どんなに理屈がすばらしくても感性に合わないモノは使わなくなる。だから、先行きゴミになる可能性があったり、一時的に可愛いからだけで商品は買いません。買うときも、家事をしていても、自分の中にある感性の軸の部分にきちんと響く、本当の気持ちよさが大切だと思うんですね。人からどう見られるかじゃなく、楽しく長く使い続けられるモノ選びやライフスタイルを作っていけば、自然とそれがエコになるんじゃないかな」
エコというと、なんだかちょっと力が入ってしまいますが、きちんと用途があるものと長く暮らすって、本当はとても日々を楽しく心地よくしてくれるものなんですね。読者の皆さんもちいさな時間を使ってお買い物する際は、ぜひ参考に。
高橋さん流「エコショッピング心得」
- 環境オタクな商品選びをしない。感性と合う、長く使えるモノを選ぶ。
- ゴミになる可能性があるモノ、可愛いというだけのものは買わない
お友だちの松田美智子さんプロデュースのお気に入りの土鍋。ごはんはこれで15分でできるため、手早く作ったおかずと出来上がりのタイミングがぴったりなのだとか。
スウェーデン人ファミリーのサマーハウス。この写真と写真立てと一緒に「いつでもおいで」と鍵をプレゼントされた(!)。スウェーデンの人ってすてきですね。
イタリア人デザイナーが手がけた驚くほど軽いメープル材の椅子はマルニ木工の商品。ご自宅のリビングだけでなく、会社のショールームでも使っているのだとか。
テラスのちいさなビオトープ。もうひとつのテラスでは、春から夏の頃、ハンモックを吊るして休日をゆっくり過ごすそうです。
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