自由時感

    ちいさな時間研究所

    衣を通じて伝えたい
    東洋的思想と自然と共生する暮らし

    せんせい:真砂三千代

    やじま かなこ さん プロフィール写真

    まさご みちよ さん プロフィール

    衣作家 1947年東京生まれ。1971年田中千代服装学園デザイン科卒業「第2回カネボウ日本大賞金賞・銅賞受賞」し、カネボウファッション研究所入社。インドへの旅、その後池田貴雄パリコレクションディレクターとして東京とパリを往復する生活を経験。出産を期に仕事を辞め、5ケ月の赤ん坊をつれ夫と三人でバリに住み、生活と仕事の理想的な在り方を知る。1986年アジアの布で作る衣ブランド「Afa」をスタート、1999年オーガニック・コットンの日常着ブランド「Lifeafa」をスタートさせる。染織家とのコラボレーションによる作品では日本古来の結ぶ・重ねる・ひねる等の伝統的な着付けによる衣制作を、ニューヨークやミラノで発表。その他音楽家や舞踊家などパフォーマーの衣装を制作、著書に「風着 color of India」(文化出版局)がある。

    美しく力強いアジアの衣服に学ぶ

    日々の暮らしをもっと心豊かに過ごしたいと願いながら、仕事や家事、子育てなどに追われ、ただ慌ただしく過ぎてしまうという人は多いのではないでしょうか。仕事や家事をこなしながら、より心豊かに過ごすにはどうすればいいのでしょうか。衣作家の真砂三千代さんは、東京と海外を行き来する忙しいアパレル勤務時代を経て、現在は自社ブランドの運営や展覧会に向けた作品づくりなど、ご自分のペースを大切にしながらも精力的に活動されています。真砂さんの作品が生み出される背景や現在に至るまでのライフスタイルには、そんな「心豊かな暮らし」につながるヒントがありそうです。
    今回は葉山にある真砂さんのアトリエ兼ご自宅にお邪魔し、お話を伺ってきました。
    「東京でのファッションの仕事はすごく面白かったのですが、あまりにも忙しすぎて、自分を見失いそうなほどでした。作るってこういうことでいいのか?と・・・。そんな時に行ったインドでカルチャーショックを受けたのです。それまで洋服は人の体に合わせて作っていくものと思っていましたが、サリーは1枚の布を体にぐるぐると巻き付けるだけ。それまでの概念とはまさに対極でした」と語る真砂さん。畑仕事をする時も、女性はみんな美しい色を纏って華やかなアクセサリーをいくつもつけているそうです。素朴な風景の中で作業する人々の美しさと力強さに魅せられ、自分のルーツであるアジアや、そのライフスタイルについて見直すきっかけになったとおっしゃいます。

    創作に大切なのは、自然を身近に感じる暮らし

    真砂さんのアトリエ兼ご自宅は、海があり緑も豊かな葉山にあります。木々に囲まれた小道を行った先にある一軒家で、フランク・ロイド・ライトに学んだ遠藤新氏が手がけたものです。和と西洋の趣をあわせ持った独特の雰囲気があります。
    「ここは小道があって、バリに住んでいたころの雰囲気にとてもよく似ています。バリには夫婦共に東京での仕事を辞めて、子どもと三人で行きました。普通は子どもが出来たら一生懸命仕事しようって思うのに、能天気もいいところなのですが(笑)」
    バリの生活で経験した自然と共生する暮らしは、その後の真砂さんの生き方に大きな影響を与えたそうです。日本へ戻ると東京から葉山に移り住み、自然豊かな環境に身を置いて作品を作る現在のスタイルに行き着きました。通して頂いたご自宅のリビングには、実際に使用しているという石造りの暖炉があります。庭で採った薪で暖をとれば、時間がゆったりと流れ自然をより身近に感じられそうです。
    「近隣には写真家やミュージシャンも多いですよ」
    真砂さんと同様に、自然豊かな環境は多くのクリエーターを引き寄せる魅力があるのでしょう。

    少しずつの積み重ねで世界は広がる

    真砂さんが展覧会を始めた頃は、友人だけを呼ぶごく身内だけのものだったそうです。それが長年、身近な縁をつむいでいった結果、海外でも開催することに。
    「次の北京での展覧会は従来の作品だけでなく、オートクチュールも発表したいと思っています。それで、今は東洋的なオートクチュールとは何かということを考えているところです。手織や草木染めの高いエネルギーのある布を生かし、そういうもので着やすい衣が出来ればいいなと思っています」
    活き活きと次の作品への意欲を語る真砂さん。
    「展覧会を主催してくださる方は、台湾茶の世界を構築された女性です。北京でのお茶会に招かれて行ってみたら、ギャラリーで行われた50名の大茶会が素敵なアートの世界で本当に感動しました」
    他分野で刺激を受けたことも、作品のインスピレーションになると真砂さんは言います。自分が感じたことを大切に、一つひとつかたちにして世界を広げていく真砂さんの生き方は、少しずつでも積み重ねていけば、自分が思い描くスタイルに近づけるのだと勇気づけられるものでした。

    中央に飾られた絵画はアーティストでもあるご主人の作品。暖炉のそばに置かれた薪は庭から採ってきたもの。自然豊かな環境ならでは。

    リゾート感が漂う日当たりの良い縁側は、時間がゆったりと流れているような感覚に。バリの雰囲気に似ているというのも頷ける

    旅先で購入した亀の置物はご主人のコレクション。木や鉱物、樹脂などの素材で作られたデザインの亀も部屋の雰囲気にマッチしている。

    台湾で開催した展覧会のラインナップ。アジアらしい魅力を感じるシルエットと天然素材にこだわったやさしい色合いの衣が並ぶ。

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