自由時感

    時間の生き方1問1答

    Q1.書斎ではどんな風に過ごしていますか?

    (坂川さんの書斎にてお話をうかがいました)
    ここはいわばガス抜きの場。40代の頃から家とは別に書斎部屋をもつようになって、このマンションは2軒目。8年前に移って来ました。毎週金曜の夜から、日曜の昼くらいまではここでひとり「充電時間」を過ごすんです。もちろん本も読むし、物を書くことも。あとは葉巻を吸って、映画を観たり。
    ひとりでいるのが好きなんです。40代後半くらいからひとりの時間が面白くなってきた。それはだんだん年を重ねるにつれ強くなる。もともと沢山の人といる方が好きで集団で行動していたんですけれどね。ご飯食べに行くのも、旅行するのもひとりで行くなんて嫌だって思っていた。こうしてひとりでいたくなるっていうのは人生で初めての経験で新鮮な感じ。いまはそれを楽しんでいますね。

    Q2.坂川さんが考える豊かな暮らしとは?

    私は不便の幸せを味わえるような環境に身を置いていたいですね。昔から最新のものに飛びつかない主義で、携帯電話もMacも取り入れるのは遅かった。どんなに便利だろうと、いい面と悪い面を自分なりに知ってから使いたいから。最近話題のデジタルブックも世の中の半分には浸透するんじゃないかと思うけど、私は様子を見ようと思う。便利なものが全てだと思うことは怖い。無駄なものって大切ですよね。不便な方が何か工夫が生まれるし、無駄と思えることが最終的に何か役に立ったりもする。不便にはそういう広がりを感じます。
    私は別荘なんかを持ったとしたら、まず薪割りからするだろうな。田舎に行って便利に生活する必要は全然ないから。週末だけそういう不便な所に行くような都会生活と両方できるのがいい。それが一番豊かな暮らし方かもなぁ。

    Q3.これまでに大きな影響を受けた出来事は??

    私が23歳のときの、ある人との話で今でも忘れられないことがあります。デザイン事務所にいた頃に作業員風の人と知り合って、家に遊びに行ったことがあったんです。アパートの1階にある部屋を訪ねたら、その人の朴訥とした風貌とはイメージの違うクラシック音楽が流れていて、マーラーだと教えてもらいました。その頃の私は少し人を見下すような生意気盛りだったので、人を外見だけで判断していた自分に気づかされた。安いウィスキーを「ワンカップ大関」の汚れた空き瓶に注いでもらって話をしていたら、突然「坂川君、人にものを伝えるって、どうやったら一番伝わるか分かる?」って聞かれた。質問にも驚いたし、答えもさっぱり分からなかった。すると、その人が「人にものを伝えるときは例え話や比喩を使って、遠回りして表現した方がむしろよく伝わるんだよ。覚えときな」って言ったんです。それはずっと頭に残っていて、いまの自分の会話術やデザインにも、全てに影響しています。

    Q4.人生という自由時間、どう使う?

    自分だけのために使いたい。私にとって人への気遣いみたいなものは当たり前で、人に対してはワガママの加減がか分からなくて実はいつも「こんなことしていいのかな?」って内心思っているんですよ。そういう部分を少しづつ壊していきたい。ひとりで散歩しながら感じることをメモしたりするんですが、それを後で見ると自分ってこんな一面があったんだって気づく。それが楽しくて幸せ。他人より自分に興味が持てるようになってきたんです。自分の中に何が眠っているかっていうことを探ることが今は一番楽しい。
    もう「欲しがる」ということはないですね。物質的には別荘が欲しいだけ。あとはもう気持ちも充足していて、何も要らない。もうこの歳になると「成長」は終わって、今度は出会ってきたものを繰返すだけなんです。繰返すというのは味わうということ。だからいまは味わいつくしたい。自分の喜びの幅の中で幸せになりたい。「残りの時間を知っているか」が大事ですね。墓場には思い出しか持っていけないから、今ある時間、今持っているものを楽しもうって思います。

    「男っぽい内装が好きな女の人のインテリア」と自ら分析する書斎。本以外にもCDやDVDが積み上げられています。有名写真家のオリジナルプリントや葉巻の箱や急須、鳥かごなど趣味の小物に囲まれて。

    間接照明がオレンジ色に光る中、葉巻の残り香が漂う独特の雰囲気。外国の雑貨屋さんにでも迷い込んだかのような気分になります。

    坂川さん流の
    キレイに見える「散らかし方」

    雑然としてしまうはずの物が多い部屋を、こんなに美しくまとめている坂川さんに、お部屋を上手に散らかすコツを伝授していただきました。

    ポイント1:「空き」をつくる
    例えばテーブルの上に何本も置かれたキャンドル。ばらばらとテーブル一面に置いてはNG。一画にまとめて残りのスペースに何も置かず「空き」を作ることで落ち着いた印象に仕上がります。

    ポイント2:「直線」で見せる
    大量の本や、幾つもの額もなぜだか美しく映る坂川さんのレイアウト。秘密は角を揃えて直線で仕切っていること。床に積みあがっただけに見える本も、直線を意識した空間を作るだけで立派な見せる収納に。

    自分流のセンスで日々を味わう坂川さん、
    本日はありがとうございました。

    坂川さんのデザイン会社『坂川事務所』
    オフィシャル・サイト:www.skgw.jp/

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