自由時感

    時間の生き方1問1答

    Q1.作原さんのルーツとは?

    小さな頃から物を作ったり、部屋を飾って母親を喜ばせることが好きでした。私の母は器や布小物などを集めるのが好きで、それらを自分の目で選んだり、自分でも手作りすることを楽しんでいました。玄関やリビングにはいつも庭で育てた花を飾っていましたし、母の影響は大きいですね。
    大学ではインテリアとはまったく違う分野に進んだのですが、卒業するころ、ちょうど「クラフト作家」と呼ばれる人たちがたくさん出てきました。私は自分でそれらを作ることはできないけれど、アーティストの人たちが作った作品を使って、素敵な空間を作ることはできるのではないかと思ったんです。卒業後の一年間は別の仕事をしていましたが、どうしてもあきらめきれず、当時「anan」や「Olive」などの雑誌でインテリアスタイリストとして活躍していた岩立通子さんに憧れ、アシスタント志願の手紙を何度も出しました。そして岩立さんからお電話をいただいたのが、この仕事につくきっかけでした。まさに運命の出会いでしたね。

    Q2.作原さんが大切にしていることは?

    師匠の岩立通子さんに教えていただいたことは今でも大切にしています。「大事なのは人とのつながりである」ということと「自分はあくまでも作家ではなく、相手から依頼されたことを自分のフィルターに通して、いろんな方向性に変えていく」という姿勢を教わりました。いまの時代、ライフスタイルそのものを仕事に取り入れている方も多いと思いますが、岩立さんはもっと職人のようなタイプで、アーティストのエッセンスはありつつも、決してそれが主ではない、スタイリストとしてのプロ意識を大切になさっていました。得意分野を持ちつつも、マルチにいろんなことができる人でした。
    岩立さんが亡くなった後、彼女をしのんで『ユーカリ』という本を3000冊限定で製作しました。岩立さんの想い出が深く、自分たちも成長させてもらった思い出の場所「葉山スタジオ」で、岩立さん愛用の私物と、好んでスタイリングに使っていた雑貨を、アシスタントだった人たちと数ページずつスタイリングを担当して、ゆかりのカメラマンに撮影していただいたんです。それにゆかりのあった方々の文章を添えて、みなさんの力をお借りして一冊にしました。そうした人とのつながりを、私は大切に思っています。

    Q3.これから挑戦したいことは?

    これからの挑戦ということでは、この夏、軽井沢の一軒の古い蔵をまるごと使って、エキシビションを行うんです。三人のスタイリストがそれぞれの部屋をスタイリングし、そこで使ったインテリアや雑貨を販売もします。テーマは「山の朝」。私はダイニングの担当なのですが、食べ物以外で気持ちがいいものを食卓に並べたいと思って、山の朝というタイトルにちなんだポストカードを並べたら楽しいな、と考えました。それで、知り合いのカメラマンの方々に「こんなことできないかな」と、相談したら、すぐに協力のお返事を頂きました。私は素敵な人たちに支えられているんだな、とうれしくなりました。
    みなさん、ふだんインテリアスタイリングは雑誌の写真などで目にするだけですよね。ここでは実際に空間を見ることができて、そのエッセンスを、器ひとつ、ポストカードひとつでも買うことができます。私もスタイリングした現場を暮らしに活かしてもらえたらうれしいです。

    Q4.人生という自由時間、どう使う?

    私にとって人生の大きなテーマは、まわりにいる人やまわりにあるモノとの関わりを楽しむことなのかな、と思っています。私が日々、楽しいことを「ああだよね、こうだよね」と問いかけると、まわりのみんながそれに反応して、新たな楽しみを返してくれる。ときには一緒に何かを創作する。それが自分の豊かな人生の時間につながっていると思います。
    私と夫の結婚のときも、ふだんお世話になっているたくさんの方々が無償の作品と文章を寄せてくださり『two of us』という小さな本を記念に作ってくださいました。友人たちがいろいろと手作りをしてくれた結婚パーティーもとても感動しました。このような幸せな出来事が実現するのも、幸いにも私がまわりの人たちに支えられているからで、人生の楽しみ方の価値観や、テンションを共有できる人たちだからだと思うんですね。
    私はいい意味で人を巻き込みたいし、巻き込まれたい。まわりの人たちとのつながりを大切に、影響し合って、これからの人生もみんなで楽しんでいきたいと思っています。

    故・岩立通子さんをしのんで3000部限定で製作された『ユーカリ』。書名は岩立氏が好んでスタイリングにユーカリの木を使ったことから。写真は葉山スタジオの様子。

    photo: Norio Kidera
    作原さんほか二人のスタイリストによるエキシビションは、軽井沢の自然の中にある古い蔵をまるごと一軒スタイリング。

    作原文子さんも参加する軽井沢のエキシビション
    スタイリスト展+ストア「歩いていたら。」

    詳しい情報はこちら:extentionstore.blogspot.com/

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